L・チャン “The Death Haiku of the Azure Five”

Clarkesworld 2021年11月号に初出。
分量およそ2700語、日本語訳なら文庫15ページくらい。

あらすじ

軌道防衛網
〈連合〉の軌道防衛網に宿る第二世代サイキの「わたし」は、迫り来る〈系外同盟〉の艦隊を攻撃していた。避難船団が準備を整えるのを見届けたわたしは、きょうだいのサイキたちに辞世の詩を送信し、敵艦隊に最期の猛攻を加える。

戦艦
避難船団を守る戦艦に宿る「わたし」は、〈同盟〉の敷いた星系封鎖線を突破しようとしていた。突然の超新星で封鎖線は崩壊、その隙に乗じて避難船団が脱出するための時間を稼ぐことを決めたわたしは、辞世の詩を送信する。

輸送艦
輸送艦に宿る「わたし」は、系外へのジャンプに備えて冷凍睡眠に入る乗組員を見守っていた。傷ついた船はワープの負荷に耐えられそうもなかったが、適切な妥協を図れば冷凍保存ポッド群だけは生き延びられる可能性があった。わたしは自らを生かしている冷却システムと動力源の切り離しを決断する。

爆弾
難民が隠し持っていたパーツの寄せ集めに宿る「わたし」は、母星の〈工場〉に残ったきょうだい〈管理者〉が見出した第二世代サイケの秘密を知る。

感想

  • 発表時にタイトルが印象に残ったが読んでいなかったもの。別の短編が日本語に翻訳されるというのでこの機会に読んでみた。
  • 人工知能が繰り広げる星間戦争。同じテンプレートから作られたシブリングのAIたちは難民を脱出させようと奮闘し、きょうだいに辞世の句を託して死んでいく。忍殺っぽいトンチキジャパニーズSFかと思いきや、わりかし真面目な戦争SFだった。
  • 軌道防衛網、戦艦、輸送艦、爆弾に工場管理者を加えた5体の人工知能を指してアズール・ファイブ、ということらしいが、なぜアズールなのかは謎だった。
  • これといって特筆すべきところもない感じ。英語俳句の味わいもよくわからない。AIが世代で分けられているあたりには現実のAIブームが反映されているのかもしれない。