ラメズ・ナム “Crux”

2013年8月刊行。
本文分量およそ144000語、日本語訳なら文庫720ページくらい。

あらすじ

ネクサス5の情報が全世界に公開されてから半年が経った。アメリカではポストヒューマン解放戦線(PLF)のテロリストがネクサスによる強制支配技術で人間を自爆犯に変え、守旧派の大統領やその支持者らを狙った暗殺を企てていた。新型リスク対策局(ERD)の神経科学顧問ホルツマンは密かにネクサスに手を染めつつ、生まれつきネクサスを宿した子どもたちの治療法やワクチンの研究を不本意ながら進めていたが、自らも巻き込まれた大統領暗殺未遂事件を調べるうち政府のマッチポンプに気づく。サマンサ・カタラネスはネクサスネイティブの子どもたちが集められたタイの孤児院で幸せな日々を送っていたが、その平穏は突如として破られる。懸賞金がかけられたケイドはフェンと共にベトナムで逃走を続けていた。追手は賞金稼ぎ、それからネクサスのバックドアを手中に入れようとする各勢力だ。ケイドはバックドアを使ってPLFのテロを阻止しようと試み、悪用されることのないネクサス6の構想を練る。そして朱水暎の娘、リンは当局に幽閉された母親のデジタル精神を解放すべく、上海でサイバーテロを引き起こしていた。

感想

訳されなかったのも無理はないと思えるくらい、つまらなかった。前作『ネクサス』からしてチープなサスペンスではあったが、もっともらしいテック描写のおかげで上巻までならそこそこ楽しめる出来だった。続編である本作には安っぽいキャラクタ、クリシェに塗れたストーリーしか残っていない。ネクサスは他者を支配し記憶を読み取る超能力めいたものとして描かれ、新規アイデアはほとんど投入されず、出来の悪いアクション映画のような逃走劇、ドンパチ、邪悪な政府の陰謀が盛りだくさんの陳腐なプロットが終始展開されてゆく。読んでいる途中で不評を漁って溜飲を下げたくなるくらいにはつらかった。読み終えられたのはひとえに貧乏性のおかげだ。とても完結編を読む気にはなれない。