グレッグ・イーガン “The Nearest”

2018年7月 Tor.com に初出。
分量およそ16600語、日本語訳なら文庫85ページくらい。

あらすじ

妻が夫と2人の娘を殺害して行方をくらませたと思われる事件が発生。ある夜、調査に当たっていた刑事が頭痛で目を覚ますと、傍らに夫そっくりの別人が寝ていた。侵入に慄きつつ生まれたばかりの幼い息子の無事を確認しに行くと、息子もまたそっくりの別人に入れ替わっていた。他の家族や同僚のことも虚ろな人形のように感じられるようになってしまった彼女は未知の感染症を疑い、単独調査に乗り出すが。

感想

  • いやこれカプグラだろ、とネタが早くに察せてしまい、そのまま探偵パートを読み進めるうちに、でしょうね、という落ちが来て終わった。症候群を知らなかったとしても信頼できない語り手であることにはすぐ気づくだろうし、いずれにせよ平凡なサスペンスに留まりそう。半端に長いのもマイナス。
  • 伝染病由来のカプグラ症候群というアイデアは面白い(同じ症状の人が現れるので入れ替わり妄想が補強される)。感染経路を帰納的に突き止める過程は特になく、ほぼ思いつきのように見えるのが微妙か。夫や息子にキスしている描写は意味なかったのだろうか。
  • 身も蓋もないが、発症者仲間の誰かが「家族 偽物」でググったら終わる話に思えてしまう。