リッチ・ラーソン “Ice”

Clarkesworld 2015年10月号に初出。
分量およそ3800語、日本語訳なら文庫20ページくらい。

あらすじ

凍てついたメタンの海が広がる植民惑星ニューグリーンランドへと地球から越してきたセジウィックフレッチャーの兄弟は、地元少年たちと共に、氷を破るフロストホエールのブリーチングを間近で見る夜の度胸試しに出かけた。

感想

  • 映像化するということで読んでみた。いまいち。
  • 特に手を加えず自然に生まれた兄、改変処置を受けて生まれた優秀な弟。あらゆる点で追い抜かれていく兄は屈託を抱えている。たった2歳差なのに兄だけ処置を受けていない理由は特に示されない。地球を出られる技術水準なら後から強化することくらい簡単そうなものだが。
  • 少々険悪な兄弟も結局は互いを思いやっていたんだね、というどうってことのない結末で、SF要素がなくても書きようのある話。メタンの海を泳ぐ氷クジラはヴィジュアル先行で、その存在を支える理屈はない。そういう異星生物学を突き詰める趣向じゃないのはわかるが、この設定だからこそと感じさせるような舞台設定と話の噛み合いが薄いと思う。恒星間航行技術がありながら過酷な氷惑星にわざわざ植民してメタンを獲るのも胡乱だ。
  • 共通語らしいベーシックなる言葉があるっぽい。他の作品でも複数の言語を使ったり手話を出したりしているが、拘りポイントなんだろうか。なんかよくわからない台詞がある程度の印象。