リッチ・ラーソン “Painless”

2019年4月 Tor.com に初出。
分量およそ5400語、日本語訳なら文庫30ページ弱くらい。

あらすじ

先天的に痛みを感じない少年はその才能を買われ、バイオエンジニアリングの実験体となり、肉体の自己再生能力を得る。不死身の暗殺者として任務に従事する日々に倦んで脱走兵となった彼はとある噂を聞きつけ、武装集団が居座る廃病院に突入する。

感想

  • 「肉と塩と火花」同様のSFドラマっぽい作りの短編。物語のパーツも似ている。回想を挟んで主人公の来歴や現在の目的を徐々に明かしていく手際は程良く、特に困惑なく素直に読める。まあ、普通に面白いという水準に収まっているとも言える。
  • スパスパと指を切って飢えた野良犬に恵んだり、備蓄として熱々の肉をしこたま食べたりするシーンは、主人公の再生能力と無痛症をグラフィカルに伝えていて良かった。一方で戦闘描写はごくあっさりしており、話がシンプルなだけにもう少し文章で魅せてくれたらと思う。
  • そこまでできるんかいってオチには笑った。これで感動を惹起するにはエピソードの肉付けが必要では。
  • ハウサ語、フランス語、アラビア語などが混じっている。読めない。
  • 異形ゆえの孤独や不死身の自殺企図は親しみやすい王道だが、道が整備されすぎていて意表を突くことがない。アイデアの新規性や思考実験よりもオーソドックスなストーリーの量産が売りなのか。もう少し長めの短編を読んでみるべきかも。