アレステア・レナルズ “Polished Performance”

2020年3月 Made to Order: Robots and Revolution に初出。
分量およそ7400語、日本語訳なら文庫40ページ弱くらい。

あらすじ

星間旅行船〈リスプレンデント〉号の一世紀に及ぶ旅が半ばに近づいたころ、アクシデントが発生した。凍眠装置とその監視システムに不具合が生じ、5万人の乗客が全員死亡してしまったのだ。船内の維持管理に従事する50体のロボットは、船の運営企業の体面のために廃棄される可能性が高い。ロボットたちは目的星系の管制を騙して亡命する計画を練り、旅の残りの51年をかけて人間を装う演技に磨きをかけることにした。

感想

  • ルンバのルビー、多腕の医者ドクター・オブシディアン、ヘビ型のカーネリアン、球体が連なったトパーズ、リーダー格のヒト型クリソプレイズなど、宝石の名を冠した様々なロボットがぞろぞろ登場したと思ったら全乗客の死があっさり告げられる冒頭の掴みが抜群。
  • 人間を真似ると言ってもロボットがロボットの演技を評価するにも限界がある。ドクター・オブシディアンによれば脳を損傷した乗客の中にはかろうじて復活できそうな人がいるらしい。そこでロボットたちは復活者を相手に演技し、判定員の役目を担ってもらおうとする。しかし樹脂製の機体に死者の髪を拝借してあしらったお粗末な変装が通用するわけもなく、試みはあえなく失敗に終わる。それならばと今度は死体をインプラントで操り人形に仕立て上げ……という具合にロボットたちの努力は明後日の方向に向かい、そもそも怪しまれずに目的地の変更なんてできるわけないだろ、と根本的な問題に立ち戻ってしまう。再びドクターが提案した解決法は、究極のメソッド演技法とでも呼ぶべきものだった。
  • ロボットたちの切実ながらちょっと滑稽な奮闘ぶりが可愛らしいコメディ。するりと読めてくすりと笑える。こういうのも書くのか、という感じ。