インターネットと検索エンジンの力を借りつつ、気付いた範囲で小ネタを並べた。ページ数は文庫版。
プロローグ
頭に大雷(中略)身に八柱の雷神を(p.30) 黄泉でイザナミの死体に生じた雷神。
1
五劫はもう来ていたのだなと思う。グーリンダイのポンポコピーだなと思う(p.34) 夏目漱石「夢十夜」第一夜の一節「百年はもう来ていたんだな」。寿限無。一劫は43億2000万年。
LZ130グラーフ・ツェッペリン(p.34) 硬式飛行船。
サイコロを転がして自分の正気を確認しなければいけない(p.35) クトゥルフ神話TRPGの正気度チェック。
ウーバーメンシュで善悪の遥か彼岸に立っている(p.36) ニーチェの唱えた超人と著書『善悪の彼岸』。
ルーブ・ゴールドバーグ・マシン(p.38) 漫画家ルーブ・ゴールドバーグが考案した表現技法。単純な作業を連鎖反応する複雑な機械で迂遠に実行する。
路傍のピクニックとかピクニック・オン・ニアサイド(p.39) 前者はストルガツキー兄弟『ストーカー』の原題。後者はジョン・ヴァーリイのデビュー短編。
黒い剣《ストームブリンガー》(p.45) マイケル・ムアコックの〈エルリック・サーガ〉に登場する剣。
ミスト島(p.49) パズルアドベンチャーゲーム『MYST』の舞台。
アニマリス・モデュラリウス(p.53) Animaris Modularius 芸術家テオ・ヤンセンの作品。風を動力に生き物っぽく動く模型。
2
アルゴンキン(p.62) アメリカ先住民集団とその言語の名称。
ウラジミル(p.62) スラヴ系の名前。円城塔にゆかりがありそうなのはナボコフとかソローキンとか。
ウィヨット(p.63) アルゴンキンと同様。
オデッサⅢ(p.65) ウクライナ南部の都市か。番号は何かわからない。
スモーキー・ベイスン(p.68) わからなかった。ベイスンは盆地を意味するが。
エメラルドの都(p.77) 『オズの魔法使い』に登場する都市。
ベルナール・ギー(p.85) ドミニコ会の修道士、異端審問官。ウンベルト・エーコ『薔薇の名前』にも登場するとか。
3
イタリア人配管工(p.96) マリオ。
アルフレッド・x・xには任意の姓を代入、氏(p.98) 円城塔作品でいうとレフラーとか。後段引用されるベスターもアルフレッド。
器官なき領野(p.113) ドゥルーズとガタリが扱った概念「器官なき身体」か。
4
ファランステール(p.119) Phalanstère シャルル・フーリエが提唱した自給自足可能な集合住居。
コウモリになることさえも難しい(p.124) トマス・ネーゲル「コウモリであるとはどのようなことか」。
緑色の眼鏡を好んでかけ続ければ、都市は緑色にしか見えない(p.125) エメラルドの都の住人は緑色の眼鏡をかけているため何もかもが緑色に見える。
永遠にさまようことを運命づけられたチャンピオンたち(p.127) マイケル・ムアコックの〈エターナル・チャンピオン〉シリーズ。
強い@原理(p.128) 人間原理。
それがトーラス状をしていることを確認した(p.129) ドラゴンクエストに代表される古典的RPG世界はトーラス状の形をしている。
イドモン(p.136) ギリシア神話の登場人物。アラクネの父。
アームストロング(p.138) アームストロングも色々でよくわからない。
5
ワリャーグ(p.154) ソ連・ロシア製の巡洋艦や空母の名前。
ハリ・セルダン=22(p.156) ハリ・セルダンはアイザック・アシモフの〈ファウンデーション〉シリーズの登場人物。ジョーゼフ・ヘラー『キャッチ=22』のタイトルはジレンマや不条理な状況を指す言葉として実際に使われているとか。
粥が炊けるまでの短い時間、人間であるという夢を見ていた(p.159) 邯鄲の枕。
ギリシアの火(p.161) 東ローマ帝国が用いた焼夷火器。その製法の記録は現存していない。
手元の毒杯をもてあそんでいる(p.161) ソクラテスか。
自分が性交した場所には必ずミサイルが落ちる(p.167) トマス・ピンチョン『重力の虹』にそんなくだりがあるとのこと。
6
ペリスフィア(p.172) Perisphere 1939年開催のニューヨーク万国博覧会にて建造された巨大な球体建築。三角錐の尖塔トライロン Trylon とセット。ジャック・ウォマック『テラプレーン』なんかにも登場。
ブライアント・パーク(p.177) ニューヨーク市マンハッタン区にある公園。
殺人事件を切り株の横で待ち続ける(p.179) 守株待兎か。
人間というアーキテクチャは、自分は死んでいると信じ込んだり、自分は存在しないと信じ込んだりできる(p.184) コタール症候群。『ブラインドサイト』のあれ。
7
永久不滅ポイント、Tポイント(p.200) 実在するポイントサービス。
ありそうな状況を片っ端からつぶしていけば、最後にはありえない状況が残り、自分はそのありえない状態としてしか存在できない(p.202) シャーロック・ホームズの台詞「不可能を除外して残ったものはそれが到底ありそうになくとも真実に相違ない」をひっくり返したもの。
高エネルギー反応でしたっけ、転移領域でしたっけ(p.207) SFアニメなどにおけるそれっぽい説明台詞か。『新世紀エヴァンゲリオン』とかで聞いたことあるような。
普遍の鍵(p.214) パオロ・ロッシ『普遍の鍵』か。
アゾート(p.214) Azoth 錬金術用語。パラケルススが使った剣とか賢者の石とか霊薬とか。
龍玉(p.214) ドラゴンボール。
願望機械(p.214) ストルガツキー兄弟『願望機』か。映画『ストーカー』に採用されなかった脚本。
存在の耐えられない軽さ(p.214) ミラン・クンデラの小説。
8
発達した魔法が科学に到達した宇宙だろうか(p.230) アーサー・C・クラークの第三法則「充分に発達した科学は魔法と見分けがつかない」をひっくり返したもの。
スフォルツィンダ(p.232) Sforzinda ルネサンス期の建築家アントニオ・フィラレーテが構想した八芒星形の理想都市。
塩を吹き出し続ける臼や、酒の湧き出し続ける瓢箪、米が減らない米櫃(p.233) 物が容器から尽きず出てくる昔話のひとつの類型。たいてい横取りした者が悲惨な目に遭う。
四次元に存在するのだという伝説のポケット(p.233) 『ドラえもん』の四次元ポケットか。
9
光線が襲いかかる《Green Light Attaked》(p.256) 作中で言及されるようにアルフレッド・ベスター『虎よ、虎よ!』から。タイポグラフィを駆使した場面。
牛耕式(p.256) 書字方向を行ごとに反転する古代の書法。
回る回るよ宇宙は回る(p.257) 中島みゆき「時代」の歌詞「まわるまわるよ時代はまわる」。
ジョウント(p.277) 『虎よ、虎よ!』に登場するテレポーテーション能力。
10
培養槽の中に浮かんだ脳に培養槽のことを本当に想像できると思うの(p.297) ヒラリー・パトナムの思考実験「水槽の脳」。
エピローグ
磨崖仏(p.326) 自然の岩壁に直接彫り込まれた仏像。
人間を兵器とした艦隊をコレクションする(p.332) 『艦隊これくしょん』。