ジェイソン・ハフ&ラメズ・ナム “All Together, Now”

2017年7月 Mech: Age of Steel に初出。
分量およそ5900語、日本語訳なら文庫30ページくらい。

あらすじ

アトランタの都市に機械の軍勢が、多脚多腕の巨大ロボットが迫り来る。銃、パワードスーツ、ドローン、友軍の仲間とリンクしたクリス・ウィルソン伍長は、強大な敵を目指して街を駆け抜ける。

感想

  • 都市を蹂躙する敵の巨大ロボに向かってサイバネティックでオーグメンテッドな兵士がひたすら走る。ただそれだけの話と言っていい。ミリタリSFワードの弾幕圧電効果による電力チャージを絡めた前進と跳躍の描写が格好いい。ただし早々に通信を妨害されてしまうので、あらゆるデータを共有するハイヴマインド的軍隊という設定はほとんど活かされていないのが残念。
  • シンギュラリティに至ったAIの独白が幕間に挟まれる。人間は武力を洗練させるばかりで自滅一直線だからひとつに団結させて平和を実現しようという、割とベタな思惑。主人公も集合精神にリンクされてしまうオチはそれまでの疾走感との落差にもやっとする。
  • なぜ巨大ロボなのか。アンソロジーのテーマが巨大ロボだから。お約束を正当化する理屈をひねり出してはいない。むしろアスファルトに足跡を穿ち車から車へピョンピョン跳躍できるサイボーグをそれらしく描くことに重点が置かれている。
  • 共作の分担は不明だが、内容はいかにもナムっぽい。「ライフルが脳にささやきかけてくる」という冒頭からして「水」と同じ。